なぜ「No.2」は育たないのでしょうか?〜リーダー育成の難しさ〜

どんな「No.2」が理想ですか?

「No.2がなかなか育たないんですよね」

そんな声をよく耳にします。
「No.2が育たない」はリーダーが抱える定番の課題のようです。

ここで考えたいのは「No.2が育たない」と嘆いているリーダーがイメージしている「理想のNo.2像」についてです。
この場合、多くの方が「自分のコピー」のような人を想像しています。 

「自分と同じ考え方で」
「自分と同じように指示が出せて」
「言わなくても同じことができて」

だいたいこんな感じです。
「私の代わりに私と同じことができる人を育てたい」なんですね。

 

なぜ「No.2」は育たないのか

ところが、残念ながらそういう人材は育たないようにできています。
時折、突然変異的にそういう人材が現れて、奇跡的にうまく行っているパターンもあるのでしょうが、基本的にそういうことは起こりません。

「自分のコピー」を作りたいリーダーは、自分のやり方はみんなにもしてほしいと考えます。
自分がやっているやり方が正解で、それ以外は間違いという考えが、どこかにあります。
そのようなチームでは、「自分で考える」ということが行われません。

「言われたことをやる」もしくは「叱られないことをやる」が刷り込まれてしまいます。
今、最善の仕事は何か、よりも、どうすればリーダーに気に入られるか、疎まれないか、という視点でしかモノが考えられなくなるのです。

すると、あなたと似たような、「ブランド品のコピー商品」のようなニセモノの「自分のコピー」は生まれても、ホンモノのあなたの代わりとなる人材は育たないのです。

どんな人が「No.2」に向いているのか

では、どうすればNo.2は育つでしょうか。

実は、「No.2」は「自分のコピー」ではありません。
まったく自分とは似ても似つかぬタイプである方がいいのです。

考えてもみてください。

例えばリーダーがむちゃくちゃ器が大きくて優しいタイプだったとしましょう。
No.2も同じタイプならどうでしょうか。
とてもつもなく緩慢な組織ができあがります。

反対に、リーダーがとても自他ともに厳しく、No.2もまた自他ともに厳しいタイプでしたら、どうでしょうか。
もう、息が詰まります。

リーダーに話を聞くと、「自分のコピー」を求めながら、「自分の足りないところを補ってくれる人材」も求めていたりします。
ここで押さえておきたいのは、「あなたのコピーはあなたの足りないところを補ってはくれない」ということです。

むしろ、自分とは似ても似つかぬタイプだからこそ、あなたの足りないところを補ってはくれるのです。
見ている視点の異なる人、やり方の異なる人。
だからこそ、あなたの足りないところを補えるんですね。

 

「No.2」を育てることは、リーダーが試されること

さて、ここで問題があります。
それはコミュニケーションです。

自分と似たタイプというのはコミュニケーションが取りやすく、自分と異なるタイプの人間とはコミュニケーションが取りにくいようにできています。

そして、私たちはコミュニケーションを取りやすい人間を評価しがちです。
意思疎通が計りやすいほど、「良い人材」と考えます。

ここに落とし穴があるのです。

 

人間が下す評価はほぼ主観です。
人が何かを評するときに、客観的に評価するなど不可能です。

そこには少なからず「好き」や「嫌い」の感情が介在してきます。
ですから、自分と異なるタイプの人間を重用するのは、リーダーの器が試されることなのです。

No.2候補の見つけ方

では、そんな「No.2候補」をどのように見つければ良いでしょうか。

まずは、リーダー自身が自分を知ることです。
自分がどういう考え方で、どういう仕事の仕方で、何に怒りを感じ、何に喜びを感じ、どんなコミュニケーションを好むのか。
そういうことを知ることです。

すると、「自分とは似ても似つかぬタイプ」がどんな人材かが見えてきますし、その人とどんなコミュニケーションを取れば良いかも見えてきます。
リーダーがカリスマであればあるほど、つまりは瑣末なことまで口を出せば出すほど、「自分とは似ても似つかぬタイプの人材」は頭角を表しません。

その時点でリーダーは、組織マネジメントについて考えるでしょう。
どうすれば「自分とは似ても似つかぬタイプの人材」は頭角を表すかを。

つまりは、いかに引き算をするか、です。
必要最低限のことをし、できるだけ引き出すことに専念するわけです。
マネジメントが変わります。

そうすると、未来を託せる人材がどんどんと育ってきます。
その中にはきっと「No.2候補」となる人材もいるはずです。

No.2が育つ土壌を育むのがリーダーの仕事

植物を育てるとき、茎や根、葉を手で引っ張って大きく育てようとする人はいません。
それでは枯らせてしまいます。

 

人間も同じです。
人材育成だって、土壌を育てることから始めねばなりません。
リーダーが組織に育む空気感は、植物を豊かに実らせる土壌に似ています。

人が育つ組織には、人が育つ土壌があります。
「No.2が育たない」のは、育たないからではありません。
「育てていない」なのですね。

この記事を書いた人

くればやし ひろあき

株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

「自分で考え、自分で行動する人を育てる」をモットーに、16年間公立中学校で3,000人以上の子どもたちや若手教員を指導。当時世界最大の児童生徒数だった上海日本人学校や市内で最も荒れた中学校などで生徒指導のリーダーを務める。
独立後はその経験を生かして講演活動を行う傍ら、セミナーやコンサルティングを通して、企業や学校、チームからご家庭まで、大小さまざまな組織のマネジメントをサポート。
独自のアルゴリズムで人材分析を行う人事支援アプリ『CrewDocks®︎』を開発。
TikTokに「人間関係づくり」をテーマにしたショート動画を配信し、フォロワー数は11万人を超える。