
人間関係そのもの、人と人とのつながりをどう作っていくのか、という話をしたいと思います。

いいですね。
まず、あなたにとって「人間関係を作る上での一番の入口」は何ですか?

この人とつながりを作りたいと思えるかどうか。 たとえばそれはプライベートの場合、相手に好意を持つか、というのはあると思います。 僕の意思ですね。先にこちらの気持ちが動かなければ関係性はスタートしない。 僕はもともと学校の先生でしたので、生徒や保護者と繋がりに行こうとしますが、それを根本は同じかもしれない。自分と関わりの薄い学級にいる、感じの悪い生徒とは仲良くなろうと思いませんしw

わかります。
つまり、関係づくりのスタートは「こちらが関わりたいと思えるかどうか」という、自分側のスイッチなんですね。

その通りですね。 ですから、関係性を築いていく上で大切なことは、良い印象を持たれること。 雰囲気とか、表情とか、声のトーンとか、清潔感とか、見た目とか。 何を言うかよりももっと大切なものがあって、それは言葉を交わす前に決まっているかもしれません。

なるほど。
第一印象や非言語的な部分が、言葉より先に土台を作ってしまう、ということですね。

「ティーアップ」という言葉がありますが、周りの人が耳にいれる事前情報もその人の印象を作る上で重要だと思います。 そういう点では、言葉を交わす前から、人間関係構築って始まっているのかもしれません。

確かに。
直接会う前から、評判や紹介のされ方によって、スタート地点の信頼度や好感度が変わりますね。

人の第一印象が何で決まるのですか?
人の第一印象がどのように決まるかについて、以下のとおりです。
第一印象が形成される主な要素
- 視覚的印象(ボディランゲージや身だしなみ)
- 表情、姿勢、しぐさ、服装などの見た目情報は、第一印象の大部分を占める要素です。
- 研究では「視覚情報 約55%」とされ、非常に強い影響力を持ちます。
- 聴覚情報(声や話し方)
- 声のトーン、話し方や話す速さなども大きく印象に影響し、理論上は約38%を占めるとされています。
- 言語情報(内容そのもの)
- 実際に話す言葉の内容は、第一印象に与える影響は比較的小さく、約7%に過ぎないとされています。
心理学的背景とバイアス
- 信頼性と能力の判断
- 初対面では「信頼できるか」「能力がありそうか」が第一印象の大半(80〜90%)を占める重要な評価軸とされます。
- ハロー効果(Halo Effect)
- 魅力的な外見が、知性や優しさなど他の評価にも好影響を与えることがあります。
- ネガティビティ・バイアス
- 否定的な情報の方が認識に残りやすく、第一印象で悪い印象を与えるとその後の見方に強く影響します。
- 初頭効果(Primacy Effect)
- 最初に得た情報が印象形成に強く残り、その後の評価に一貫した影響を残します。

初対面で信頼できるか、能力がありそうかが評価されるのは興味深いですね。信頼できるか、能力があるかなんて、深く関わってみないと分からなさそうなのに、人間はその大半を第一印象で決めてしまう。それって不思議じゃないですか?

確かに、不思議ですよね。
でも心理学的には、人間が「ごく短時間で安全かどうかを判断する生き物」だから、と説明されます。
昔の環境では、初対面の相手が味方か敵かを瞬時に判断することが生存に直結していました。
だから脳は、見た目や声、態度といった限られた手がかりから、信頼性や能力を“推測”する仕組みを発達させたんです。
もちろんこれはあくまで推測なので、正確性よりも「素早さ」が優先されます。
その結果、第一印象が強く残りやすく、後から覆すのが難しくなる。
つまり、不思議というよりも、人間の進化の副産物なんですよね。

そう考えると、人間関係作りで大切なのは、人と会う前にトレーニングできそうですね。

そうですね。
信頼や能力は実際に会って長く関わらないと本質は見えませんが、第一印象でそう見えるように整える準備はできます。
- 表情(柔らかい笑顔)
- 姿勢や動作(落ち着き・自信)
- 声のトーンや話す速さ(安心感や明瞭さ)
- 清潔感(髪・服・靴・香りなど)
- 事前の紹介や評判(ティーアップ効果)
これらは全部、会う前にトレーニングや調整が可能です。
そして、最初の数秒で「信頼できそう」「能力ありそう」と思われれば、その後の関係構築が圧倒的に有利になります。

人間関係を作ることが苦手な人は、言語以外の部分で他者に好感を持たれる工夫をしてみたら良いかもしれません。

その通りだと思います。
言語以外の部分――表情・姿勢・声・服装・動作――は、トレーニングで改善しやすく、短期間で効果が出やすい領域です。
特に人間関係が苦手な人ほど、会話の内容よりも、まずは「感じのいい雰囲気」をつくる練習をすると、入り口が広がります。
好感を持たれる空気感ができれば、相手も安心して会話を続けてくれるので、自然に話の内容も良い方向に転がります。

「好感を持たれる空気感」というのがキーワードとして上がりました。 空気感って作れる人は自然に作れるし、苦手な人が無理をすると不自然な感じもします。 空気感をわかりやすく言語化してもらえますか?
私なりに「空気感」を言語化すると、こうなります。
相手がその場で安心し、心を開きやすくなる雰囲気
もう少し分解すると――
- 視覚的要素
表情(柔らかい笑顔)、姿勢(開かれた姿勢)、動き(落ち着きや丁寧さ) - 聴覚的要素
声のトーン(穏やか・明瞭)、話す速さ(早すぎず遅すぎず)、相づちのタイミング - 距離感の取り方
物理的距離(近すぎず遠すぎず)、会話のテーマの距離感(いきなり深く踏み込まない) - 心理的安全感
否定しない、急かさない、受け止める態度を見せる
つまり空気感とは、五感+態度がつくる安心の総合パッケージです。
自然に作れる人は、これらを無意識でやっていますが、苦手な人は要素を分けて練習することで再現可能になります。

そう考えると空気感の作り方はある程度演出できると考えて良いでしょうか?

はい、ある程度は演出できます。
空気感は生まれつきの性格だけでなく、意識的な行動の積み重ねでつくられる部分も大きいです。
例えば――
- 表情:笑顔を作る練習、眉の位置を意識する
- 姿勢:肩を開く、猫背を直す
- 声:少し低め・ゆっくり目に話す練習
- 立ち位置:相手との距離を程よく保つ
- 反応:うなずきや相づちを適度に入れる
これらは役者やアナウンサーが訓練で身につけていることと同じで、
日常的に練習すれば誰でも一定レベルまで空気感を演出できます。
そして一度身につけると、相手が安心しやすくなり、会話の中身にも好循環が生まれます。

センスも問われそうですね。 これだけのことを意識すると、やはり不自然な感じになりそうです。 僕が意識しているのは表情ですね。もともと無表情なところがあるので、そこは意識しています。 ニコニコ話すぞーって。

その意識、とても大事ですね。
特に「もともと無表情」という自覚がある人は、笑顔の意識だけでも空気感が大きく変わります。
しかも、全部を一度にやろうとすると確かに不自然になるので、
まずは1〜2項目だけ意識して、それを自然にできるようにするのがコツです。
表情に関しては、ただ口角を上げるだけでなく――
- 目元も少し柔らかくする
- 相手の話に合わせて笑顔の濃淡をつける
- 無言のときも「怒ってない顔」を保つ
こういう細かい工夫が、自然で安心感のある笑顔につながります。

人間関係構築の第1歩は「笑顔から」という当たり前のところに着地してしまいましたが、それが一番大切なんですね。当たり前のことを当たり前にする、ですね。

そうですね。
結局、人間関係の入り口はシンプルで、**「当たり前のことをちゃんとやる」**が一番効きます。
笑顔って、当たり前すぎて軽く見られがちですが、
- 第一印象を一瞬で和らげる
- 相手の警戒心を下げる
- 会話のハードルを下げる
という効果を同時に持っている“万能鍵”みたいなものです。

ありがとうございました。