なぜサッカー日本代表に古橋選手や旗手選手は選ばれなかったのだろう?

監督の好む選手を集める

2023年3月15日、ウルグアイ戦(国立競技場・24日)、コロンビア戦(ヨドコウ桜スタジアム・28日)を戦うサッカー日本代表26人のメンバーが発表されました。

監督は前回カタールで開催されたワールドカップに引き続き、森保一監督。

BLUE α TYPEの監督です。

αタイプの方は、「好き嫌い」を人事に反映させやすい特徴があります。
自分に合うか、合わないか、は重要な要素です。

一方、βタイプのリーダーはゴールから逆算します。
結果につながるなら、「好き嫌い」は横に置いておくことができます。

その結果、カタールで開催されたワールドカップ日本代表は、こんな人選になりました。

26名の選手の内訳は、αタイプ16名、βタイプ2名、Ωタイプ7名という、実に偏った人選でした。
このαタイプ・βタイプ・ΩタイプはDOC3x4type診断において、コミュニケーションのスタイルを表しています。
同じタイプであればコミュニケーションがしやすいですし、タイプが異なればコミュニケーションの上ですれ違いを起こしやすくなります。

つまり、森保監督にとってαタイプの選手はコミュニケーションが取りやすく、また自分の思いを浸透させやすい相手とも言えます。
そういう人材で固めたのがカタールで開催されたワールドカップを戦った日本代表だったと、僕は分析しています。

それで第2次森保JAPANの初陣を飾るメンバーは、次のように発表されました。

人選的にはバランスの取れたメンバー構成です。
これらの選手は視察でプレーを見て、選出した選手たちです。
今後トレーニングの中でコミュニケーションを取るうちに、監督の好みに合うかどうかがハッキリしてくるかもしれません。

βタイプの人材は、物事をはっきりと伝えます。
それはαタイプの指揮官にとっては、あまり面白いことではないのです。
リーダーの悩みに寄り添い、たとえ腹の中には一言物申したい思いはあれど、「言わなくてもいいことは言わない」のがαタイプのコミュニケーションです。

それで思い出すのが、2019年にUAEで開催されたアジアカップで、第1戦・第2戦と出番がなかった乾貴士選手が森保監督に疑問をぶつけにいく場面です。ちなみに、乾選手の分析結果はこちら…

乾貴士選手はRED β typeの選手です。

初戦トルクメニスタン戦では交代枠を二つ残し、第2戦オマーン戦でも交代枠を一つ残し。
両方とも勝利したとはいえ、出番のない選手の気持ちを思えば、チャンスを与えてほしいと思うのは、β typeからすれば当然の思いでしょう。
なにせ、乾選手の43%優しさでできているのです。

この件について乾選手は「不満とかそういうのじゃなく、疑問として聞きに行っただけ」と述べています。
でも、森保監督はどのようにその言葉を受け取ったでしょうか。

コミュニケーションは、「どう伝えたか」ではなく「どう伝わったか」が重要なのです。

なお、翌月開催されたキリンチャレンジカップが乾貴士選手が日本代表に召集された最後の試合でした。
もちろん、本人のコンディションもありますから、これだけが原因ではないでしょう。

αタイプのリーダーは、コミュニケーションを大切にします。
それは互いを理解し合うための所作です。

必要な情報を伝え合うβタイプと異なり、そのときの気持ちも含めて共有し合うことを大切にします。
また、「次にどうするか」を考えるβタイプに対して、「あのときどうだったか」をαタイプは伝えます。

ここからは想像ですが、乾選手は「次の試合では交代枠を余らせずに、みんなにチャンスを与えてほしい」という要望を伝えに行ったのだと思います。

でも、森保監督はあの試合でなぜ交代枠を余らせたのかを説明したのではないでしょうか。
ここにコミュニケーションのすれ違いが生まれます。

選考に漏れた選手たち

森保監督の選手選考で話題になるのが、鹿島アントラーズの鈴木優雅選手。
ネット上では、「森保監督が嫌っている」みたいな書かれ方をしていることが多いです。
真相はわかりません。

RED Ω typeの選手は、チームの規律に従って行動することがあまり得意ではありません。
もっと自由に、感性に従って行動したい鈴木選手は、若い頃いろんなトラブルがありました。

イメージ的に、ヤンチャな印象がありますが、今は鹿島アントラーズの大黒柱として、プレー面だけでなく精神面も支える選手です。

彼はなんと言ってもカリスマ性があります。
声援もブーイングも一身に受けて、人を惹きつける魅力のある選手だと思います。

チームをグッとまとめる起爆剤になるでしょうし、それは時にチームの方向性を変えてしまう可能性(危険性)も秘めています。
BLUE α typeのリーダーは、ギャンブルを好みません。
できるだけ安全な道を志向します。

チームづくりがうまくいっている以上、「毒にも薬にもなる選手」をチームに加えることは好まないだろうと思われます。

スコットランドリーグのトップスコアラー、古橋亨梧選手も今回の選手選考に漏れた選手でした。

1トップの顔ぶれは、浅野琢磨選手(Green Ω type)、上田綺世選手(Yellow α type)、町野修斗(Red Ω type)、前田大然選手(Red α type)の選手です。

浅野選手との入れ替えはあるかな、と思っていましたが、残念ながら召集されませんでした。
同じαタイプの上田綺世選手と前田大然選手は今後も代表に定着しそうです。

古橋選手にもチャンスが巡ってくると良いですが、選考に漏れたからと言っても落ち込むのは一瞬です。
Yellow Ω typeの古橋亨梧選手ですから、もう気持ちは切り替えて、次のチャンスに向けて動き出しているはずです。
ここがΩタイプの素晴らしいところなのです。

気持ちを切り替えて、次に向けて動き出す。
これができるから、熱狂的なセルティックサポーターの前で活躍できるのだと思います。

一方、旗手怜央選手はGreen β typeの選手です。

チャンピオンリーグにも出場するセルティックで活躍中の旗手怜央選手。サッカーファンの中では、「旗手選手は選ばれるだろう」という見方がありましたが、結果的には選考漏れでした。

さて、選考基準の一つとして「リーグレベルの違い」を森保監督は口にします。確かにスコットランドリーグは、他のリーグに比べれば一段劣るかもしれません。
しかし、日本のJリーグからも選ばれていますし、ドイツ2部のデュッセルドルフに所属する田中碧選手やオーストリアのLASKリンツに所属する中村敬斗選手も選ばれています。

βタイプの選手は、「納得できるかどうか」がとても重要なんですね。
リーダーの一貫しない発言は信頼を落とすので注意が必要です。

「今のプレーに満足していない」とか「ポジションが被るのでファーストチョイスじゃない」とか、ハッキリ言われた方が「じゃあ、それ、がんばりますわ!」となるのです。
「リーグのレベルが…」と言われても、「いやいや、もっと下のリーグの奴も選ばれてますやん?」となるのです。

人事の悩みはなんですか?

話題をサッカーに絞りましたが、これはサッカーだけのお話ではありません。

人事について考えるとき、上司から重宝される人と末席に追いやられる人がいます。
その人の持つ能力以上に、人との出会いが重要であることは、社会人なら誰もが経験のあることです。

僕も自分のことを気に入ってくれた上司に引き立てられて、大きな立場をいただくことができました。
能力があったのではなく、「運」が良かったのではないかと思っています。

リーダーとの相性、部下との相性。
社会人にとって無視できないテーマですね。

まずは人材分析アプリCrewDocks®︎で、ご自身のことを知るところからスタートしてみてください。

この記事を書いた人

くればやし ひろあき

株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

「自分で考え、自分で行動する人を育てる」をモットーに、16年間公立中学校で3,000人以上の子どもたちや若手教員を指導。当時世界最大の児童生徒数だった上海日本人学校や市内で最も荒れた中学校などで生徒指導のリーダーを務める。
独立後はその経験を生かして講演活動を行う傍ら、セミナーやコンサルティングを通して、企業や学校、チームからご家庭まで、大小さまざまな組織のマネジメントをサポート。
独自のアルゴリズムで人材分析を行う人事支援アプリ『CrewDocks®︎』を開発。
TikTokに「人間関係づくり」をテーマにしたショート動画を配信し、フォロワー数は11万人を超える。