リーダーシップのお話をする前に、まずは身近な人間関係のお話からスタートしたいと思います。
これはとても大切なことなのですが、自分を知り、他者を知ると、人間関係がすれ違う原因が見えてきます。
「私とあなたはここが違う」という「違い」を見て、
「あなたは間違っている!」
と捉えてしまうところが僕らにはあります。
我が家の話をするならば、僕の妻は「丁寧に話したいタイプ」、僕は「簡潔に話してほしいタイプ」になります。
2人ともタイプが違うわけです。
すると、人間関係の「すれ違い」が起こり、人と人は衝突します。
妻は「丁寧に話したいタイプ」なので、1から10まで丁寧に話をしますが、僕は「簡潔に話してほしいタイプ」なので、「で、何が言いたいの?」と言ってしまう。
妻は(最後まで話を聞いてよ)と不満に思い、僕は(結論を言ってよ)とイライラしてしまう。
そんなことって、多いと思うんですよね。
それでこのような「人間関係」のすれ違いは、家庭に限ったことではありません。
職場でも、スポーツチームでも、学校でも。
人が集まる場所では、無数に起きていることなのです。
異なる人間が集まることで起こる、ミスコミュニケーション。
このことに気づかず、僕らは生きてきました。
だから、人間関係は難しいのですね。
相手を変えるか、自分が変わるか
さて、この「人と人との違い」を可視化し、人間関係を円滑にするのが弊社の仕事なわけですが、今日はそのお話は横に置いておきまして…。
ミスコミュニケーションについてのお話を致しますね。
「人と人との違い」を僕らは「間違い」と理解し、相手を正そうとします。
前述の夫婦の話に戻せば、妻は(最後まで話を聞いてよ)と思い、僕に対して「最後まで話を聞いてよ」と言います。
反対に僕は(結論を言ってよ)と思い、妻に対して「結論を言ってよ」と伝えてしまう。
ものの見方や考え方は人それぞれですが、この「違い」を僕らは理解できません。
ですから、衝突をするしかないのです。
そして、どちらかが折れる。
そうやって人間関係はギスギスしていきます。
我が家の場合、相性的に僕の方が強いこともあり、妻は不満を抱えがちです。
ここで話題にしたいのは、僕らは「自分を変えること」ではなく「相手を変えること」にエネルギーを注ぎがちだ、という事実です。
力関係の強い者が、力関係の弱い者を変えようとする。
こういうことがそこかしこで行われているのです。
トップダウンからボトムアップの時代へ
これまでの時代は組織は、トップダウン型でした。
偉い!
王様!
カリスマ性がある!
そんなリーダー像がトップダウンで指示を出す。
「人間関係のすれ違い」の原因である「違い」を見つけたとき、「君は間違っている。私に合わせなさい」とリーダーが伝え、部下を変えようとする。
早い話、「俺に合わせろ!」の社会でした。
ところが、これからの時代は違います。
ボトムアップの時代です。
偉い!
王様!
カリスマ性がある!
そんなのはもう古い。
ただの独裁者にしか見えません。
部下のことを知り、その人の能力を最大限に引き出すためにはどう関われば良いか、それを知っている人こそがリーダーなのですね。
その人その人に合わせられてこそリーダーです。
ですから、リーダーはストレスフルなポジションなのです。
「他者を変えること」にエネルギーを注ぐのが古いリーダーであり、「自分を変えること」にエネルギーを注ぐのが新しいリーダーなのです。
「自分にはリーダーの素質はない!でも、リーダーに選ばれてしまった!」なんて人は、むしろチャンスです。
あなたが描く古いリーダー像を、今ここで書き換えてください。
力関係が強い者が力関係の弱い者を変えようとする。
これは真のリーダーではないんです。
上手にその人の感性にアジャストして、その人のモチベーションをアップし、能力を最大限に発揮させてこそ、「この人はすごいリーダーだ!」と信頼されるわけです。
職場からチームや学級まで、「やる気」を引き出すマネージメント365ステップ
リーダーの仕事は「組織の力」を最大化すること
この話は、スポーツチームや学校を例にすればわかりやすいでしょう。
監督さんが「俺に合わせろ!」と言って、選手がそれに合わせる。
当然モチベーションは下がるし、そんな状態では能力を最大限に発揮できるとは思えません。
学校の先生が「私に合わせなさい!」と言って、児童生徒がそれに合わせる。
一人ひとりの気持ちに寄り添えない先生のクラスの子どもたちが、その力を最大限に発揮できるとは到底思えません。
で、あるならば組織である職場だって同じです。
組織が生み出すのは、究極のところ「最大の成果」です。
そして、それはその組織を構成する一人ひとりの「がんばり」によって生まれます。
一人ひとりが主体的に、高いモチベーションで取り組んでこそ、組織は「最大の成果」を生み出すことができるのですね。
ですから、リーダーである立場の人が、「俺に合わせろ!」では、組織としての力を最大限に引き出すことはできないのです。
自分とは「違う人」を大切にできる人
「変えられるのは自分だけ」なのですが、ついつい「相手を変えよう」としがちです。
これが僕らのデフォルト(初期設定)なのですから仕方がありません。
自分を律することのできる優れたリーダーは、「自分を変えること」に長けています。
相手に合わせて自分を変え、伝わりやすいように伝えます。
相手に合わせて自分を変え、モチベーションが上がるように伝えます。
これまでのリーダーはイエスマンのみを集め、従わぬ者を排除してきました。
自らの意に反する者を遠ざけ、自分だけの王国を作ってきました。
これからの時代を生きる優れたリーダーは、異なる意見をもった者ほど重宝します。
自分とは異なる貴重な意見に耳を傾け、自分自身をアップデートしていきます。
優れたリーダーほど、豊かな人間性をもち、その大きな器でもって、人の思いを受け止めます。
ですから、部下だって「この人は自分とは考え方が違う」と感じながらも、その器の大きさに惹かれ、「この人に貢献しよう」と思うのです。
人の力を最大限に引き出すことがマネジメントです
僕がお伝えしているSTR(素質適応理論)では、モチベーションが高まり、やる気に満ち溢れた状態を「脳を緑にする」と表現しています。
反対に、やる気をなくし、イライラした状態を「脳を赤くする」と表現しています。
古いリーダーは、自分の脳を緑にすることで部下の脳を赤くしてきました。
新しいリーダーは、自分の脳を多少赤くしてでも、部下の脳を緑にできる人なのです。
ですから、人はリーダーを「この人はすごい!」と信頼を寄せ、羨望の眼差しを送ります。
会社でも、スポーツチームでも、学校でも、家庭でも。
人が集まれば、そこに組織ができあがります。
組織の力を最大化させることで、最大の成果をあげること。
そういう組織だからこそ、そこで生きる人はキラキラと輝くし、大きく成長もします。
ですから、最高のリーダーとは「組織の力を最大化させること」ができる人なのです。
そのためには個にスポットを当て、一人ひとりを輝かせる必要があります。
つまり、一人ひとりの脳を緑にしていくことが求められるのです。
それはとてつもなく大変な作業であり、これを人は「マネジメント」と呼びます。
企業でも、スポーツチームでも、学校でも、家庭でも同じです。
個々が輝く関わり方を、経営者や管理職、主任、監督、コーチ、先生、パパママがすることが求められているのですね。
職場からチームや学級まで、「やる気」を引き出すマネージメント365ステップ