コミュニケーションスタイルの違いが「言った・言わない」問題を引き起こす

「伝える」ということについて、考えてみたいと思います。

私たちが暮らしていく中で、「言った、言わない」「伝えた、聞いていない」というすれ違いが、無数に起こっているのは周知の事実です。

なぜこれほどまでに、「言った、言わない」「伝えた、聞いていない」という問題は起こるのでしょうか。

なぜ「言った、言わない」のすれ違いが起こるのか

この問題をコミュニケーションという視点で考えてみたいと思います。

まず、コミュニケーションを「話す」と「聞く」で成立しています。「話す」と「聞く」が相互に入れ替わることで、会話になっていきます。

一方がひたすら「話す」で、一方がひたすら「聞く」ですと、スピーチになります。

ですから、聞く側が「言った」と主張し、話す側が「言わない」と主張した場合、話す側は「言った」のでしょうが、「そんな意図ではなかった」だと思うのです。

一方、話す側が「伝えた」と主張し、聞く側が「聞いていない」と主張した場合、話す側は「伝えた」のでしょうが、「その意図は伝わらなかった」だと思うのです。

ですから、この「言った、言わない」「伝えた、聞いていない」という問題の根っこにあるのは、「話す」側の伝え方に問題がある、もしくは「聞く」側の理解の仕方に問題があると言えます。

(もちろん伝えた相手を間違えていたり、聞いた相手を間違えていたりといった、「勘違い」は除きます)

 

コミュニケーション3タイプ

この問題はどちらか一方が悪いわけではありません。実は、「話す側」と「聞く側」のコミュニケーションの違いを理解していない、お互いの問題なのです。

私たちはこのコミュニケーションの違いを◯タイプ・□タイプ・△タイプと表現しています。

同じタイプであれば、コミュニケーションのスタイルが似ていますから、この「言った、言わない」「伝えた、聞いていない」という問題は起こりにくくなります。

反対に、コミュニケーションのスタイルが異なれば、それだけ「伝えたこと」と「聞いたこと」にはズレが生じるわけです。

私たちの調べでは、◯タイプは全体の3分の1、4割が□タイプ、△タイプは4人に1人となっています。

ですから言ってみれば、「正確に伝わること」よりも「誤って伝わること」の方が可能性は高いのです。

子どものころ、学校などでよくやった『伝言ゲーム』を思い出してみてください。

あんな簡単な言葉のやり取りですら、僕らは言葉は間違って伝わっていきます。
「又聞きの又聞き」みたいなお話ですと、もう原型を留めていないことも多いですし、「一体どうしてそんな話になったの?」と思うぐらい、「ねじ曲がって伝わっている」こともあるわけです。

理解し合えてこそコミュニケーション

コミュニケーションの目的は、意思や意図を理解してもらうことにあります。早い話、伝えたいことが伝わることが重要です。

もう一度書きます。

伝えたいことを伝えたことが重要ではなく、伝えたいことが伝わったことが重要なのです。
相手が理解できたか、がポイントなんですね。

主導権はいつも「話す側」にあります。
その「話す側」が自分のコミュニケーションのスタイルで伝えるために、世の中ではそこかしこで「言った、言わない」「伝えた、聞いていない」というすれ違いが起こるのです。

大切なことは「聞く側」のコミュニケーションのスタイルを理解し、「聞く側」が理解のできる伝え方をしてあげること。

でも、それってすごく難しいこと。

そんなとき、私たちにできることが2つあります。

通訳を用意する

1つは、こちらが伝えたいことをきちんと理解できている「同じタイプの人」に通訳をお願いすることです。

例えば、学校の授業であれば、先生が説明したことを小グループに分かれてもう一度説明させる、なんて活動はどうでしょうか。
ペアを替えて何度かやってみても良いでしょう。

説明をするたびに、理解も深まるでしょうし、いろんなタイプの人から話を聞くことでも理解は深まります。

職場で一人の部下に指示を出すにしても、Aさんに指示を出すときに、Bさんも1枚かませる、なんてのも有効かもしれません。

1対1で何かを伝えたとき、コミュニケーションのすれ違いは起こります。そこに他の人を1枚かませておくのは有効だと思います。

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伝えたことを確認する

もう1つは、伝えたことを確認すること。
指導したあと、「今、先生が伝えたことを、もう一度先生に教えてくれる?」とよく子どもたちに話していました。

「伝えたこと」と「理解したこと」には差異があります。
これは「伝えた先生」の問題でもあります。

「今、先生が伝えたことを、もう一度先生に教えてくれる?」と尋ねたとき、もしそれが先生の「伝えたかったこと」と異なっていたとしても、叱ってはいけません。

それは「伝え方」の問題であり、相手の「理解力」の問題ではないのです。
伝わっていないのであれば、伝え直せば良いだけなのです。

「伝わらない」を前提にして伝えることによって、「今、先生が伝えたことを、もう一度先生に教えてくれる?」という確認作業が生まれます。

「伝わっているだろう」と勘違いすることによって、「言った、言わない」「伝えた、聞いていない」というすれ違いが起こっているのです。

伝わらないを前提にコミュニケーションを考える

だから、コミュニケーションは難しいんです。
「話し方」をどれだけ学んでも、実はコミュニケーションはうまくなりません。

なぜならば、世の中の大半は自分とはコミュニケーションのスタイルが異なるからです。

「自分はコミュニケーションが下手だ」と思っている人は、案外自分の周りに自分とはコミュニケーションのスタイルが異なる人が多いだけかもしれません。

逆に「自分はコミュニケーション能力が高い」と思っている人は、実は自分とコミュニケーションのスタイルが似ている人が周りに多いだけかもしれません。

そして、そういう人ほど「言った、言わない」「伝えた、聞いていない」というすれ違いが起こったとき、相手の問題にしがちだということです。

本当の意味でのコミュニケーション能力とは、相手の表情から「どのくらい理解できているか」を探りながら、言葉を選んでちゃんと伝わるように伝える力なのです。

楽しくおしゃべりすることだけがコミュニケーション能力ではありません。

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この記事を書いた人

くればやし ひろあき

株式会社ミナクル組織研究所 代表取締役

「自分で考え、自分で行動する人を育てる」をモットーに、16年間公立中学校で3,000人以上の子どもたちや若手教員を指導。当時世界最大の児童生徒数だった上海日本人学校や市内で最も荒れた中学校などで生徒指導のリーダーを務める。
独立後はその経験を生かして講演活動を行う傍ら、セミナーやコンサルティングを通して、企業や学校、チームからご家庭まで、大小さまざまな組織のマネジメントをサポート。
独自のアルゴリズムで人材分析を行う人事支援アプリ『CrewDocks®︎』を開発。
TikTokに「人間関係づくり」をテーマにしたショート動画を配信し、フォロワー数は11万人を超える。